ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

ドライヤー物語。そして、僕はクレーマーになる

ドライヤー

先日書いた記事の通り長年使っていた安もののドライヤーが壊れた。だから翌日すぐにドライヤーを買いに行った。善は急げである。善じゃないような気もするけど。一番近い電器屋さんってどこだっけ?電器屋さんに行く機会などめっきり減ったので、とっさに店が思い浮かばない。まあ、適当に車を走らせていればたどり着くだろう。

 

 

 

そう思い会社帰りに適当に車を走らせていると、適当な電器屋さんに辿りついた。広い店内にはほとんど人はいない。閉店間際だからだろうか。こんな時間に電器屋さんに来るなんて、余程の緊急性がないと来ないと思う。もしくは余程ヒマなのか。

 

「ドライヤー、ドライヤーっと」

 

目的のドライヤー売り場に到着すると僕は一瞬眉をひそめた。そこは一面、ピンクの品々で埋め尽くされていた。

 

「女子かよ」

 

まあ、ドライヤーにこだわるのは圧倒的に女子なのであろう。それかオシャレに目覚めたばかりの高一男子か(野球部除く)。しかも、その半分はクルクル巻き用のアイロンである。ピンクのそれらに丸文字、ゴールドのポップ。なんだか女子高生ばかりのプリクラフロアに迷い込んだようなアウェイ感を覚えた。

 

「ピンクじゃないやつ。ピンクじゃないやつ」

 

とにかくピンクじゃないドライヤーを探す。とすれば、選択肢は二つ。白と黒。赤や青のドライヤーが欲しいわけではないので、無難な白があれば十分なのだが、それにしたってもう少し色の選択肢があってもいいような気がする。

 

あと問題なのは値段だ。以前に一万円のドライヤーをわずか一ヶ月でダメにした過去があるので安いものでいい。と思いつつ見てまわるのだが、安くても三千円くらいする。高いのだと三万円くらいする。

 

「えーっ、ドライヤーってこんな高かったっけ?」

 

ドライヤーだけにインフレが訪れたのだろうかと思うほど高い。千五百円くらいのでいいんだけどなぁと思うのだが、そんな安いのはない。しかたがないので、三千円くらいのモッズヘアーのドライヤーを手に取る。色は白だ。

 

「これでいいや」

 

ピンクの品々に囲まれたこの環境から一刻も早く逃げ出したい。なるほど、そういうことか。この必要なまでのピンク攻撃は僕の思考を混乱させるワナなのだ。

 

「これ下さい」

 

僕はこれ以上混乱しないうちにレジに向かった。横のレジにはクレーマーと思しき、家族がいる。

 

「どういうことなんですか。こんな商品売るだなんて。よく責任者に言っておいて下さいよ。」

 

「申し訳ありません。ご迷惑おかけします。本当に申し訳ありません」

 

こういう時、店員はひたすら頭を下げるしかない。悪いのは欠陥商品を作ったメーカーなのに。クレーマー家族もそんなことはわかっていて、怒りのぶつけ先がないから目の前の店員に当たっているだけかもしれない。いや、悪いのは運んできたトラックの運ちゃんかもしれない。いや、この家族が品物を開封した瞬間に落としてしまったのかもしれない。この家族には原因追究なんて必要なくって、目の前の店員に怒りをぶつけたかっただけかもしれない。

 

そんな光景を横目に僕は家に帰った。そして、さっそく新品のドライヤーを使用した。

 

ヴォォォォーーン。・・・温風が出ない。

 

ほんのりと温かい感じはするのだが、これではいつまで経っても髪は乾かない。髪が乾ききった頃にようやく温度を感じられる。

 

「欠陥商品じゃねぇか」

 

僕は電器屋の店員にクレームをつけようと決めた。