ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

トラウマ

リリーのすべて

海の仙人

絲山秋子の海の仙人という本を読んだ。主人公の男は、宝くじが当たり会社を辞めた。全国を旅し、落ち着いた地は敦賀だった。そこにに古い一軒家を購入し、どうということのない生活を送っている。豪華マンションも必要なかったし、高級車やテレビも必要なかった。

 
彼はセックスができなかった。幼少期のトラウマのせいである。それは彼の人生の中の影の記憶だった。でも、そのせいにばかりしていたために今の自分を客観視することができなかった。
 

リリーのすべて

リリーのすべてという映画を見た。世界ではじめて性適合手術を受けた人間の物語だった。彼も幼少期の出来事がその後の人生に大きな影響を与えることになる。いや、彼の場合は、生まれたときから、その性を間違えていたのかもしれない。だから、トラウマなどというものとは少し違うかもしれない。神様によって、間違いを正してもらう。正しいことは難しい。本当の自分の姿を取り戻すには時代が早すぎたようだった。
 

色を塗りかさねる

僕にも幼少期のトラウマというほど大げさなものではないが、それらしい記憶はある。なにも知らない子どもが経験する出来事は、その後の人生まで左右する。真っ白な画用紙に黒い絵の具を塗れば、そのあと、どんなきれいな色を塗っても、黒は黒のままだ。
 

誰にでも

そんな経験は誰にでもあるのだと思う。虐待を受けて育った子どもは、つらい人生を送ることが多いと聞く。無事に大人に慣れただけマシかもしれないが。逆に箱に入れられて育った子どもは世間知らずだし、ひとりではなにもできない大人になると聞く。大人になってから絵の具の塗り方を教えてもらっても遅いのだろう。他の子たちの絵はとっくに完成しているのだから。
 

僕のトラウマ

僕には甥や姪がいる。自身の子どもはいない。甥や姪に対しては、子育ての責任がないので、無条件にかわいいという感情だけで接することができる。おじいちゃん、おばあちゃんが孫に対する気持ちと同じなのだろう。とはいえ、あまりにも言うことを聞かないと、ついついきつく言ってしまうことがある。
 
ずいぶんと昔の話である。甥と母と三人で買い物に行ったことがある。店の中で甥が「あれ買ってー。ねー。ねー。」としつこくいうので、ついついカッとなってしまい「うるさい!」と怒鳴り、泣かせてしまったことがある。なぜあんな風にいってしまったのかと今でも甥に対して申し訳ない気持ちがある。甥のトラウマになってなければいいがと思うのである。