ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

コミュニケーションの取り方を学ぶ相手は人間ではなく

メダカ

うちではメダカを飼っている。名前はない。飼い始めた当初は5匹いたと思う。残念ながら死んでしまうメダカもいた。常に5匹がよかったから、そのたびに近所のホームセンターに行って、補充していた。そのうち5匹じゃなくてもいいやと思うようになり、次第に数は減っていき、今の1匹となった。

 
残った1匹が実に長生きで、メダカのくせに5~6年生きている。ひとりが好きで今の環境が快適なのかもしれない。まわりに仲間がいれば、メダカなりに気も使うだろうし、ストレスも溜まるのだろう。だけども、ひとりになってもさみしいと思うこともなく、自由に暮らしている。直径15cmの金魚鉢にいれられて、自由ってこともないだろうけど、彼はこの世界しか知らないので、きっと満足なのだ。直径15cmが彼の世界の全て。知らない方がシアワセなことだってある。ちなみにメダカの一般的な寿命は1年。長くても3~4年らしい。
 
日本のどこかで桜の開花宣言がされた頃に、彼はようやく食欲旺盛になる。僕が金魚鉢を覗き込むと、その空気を察知して、水面に浮かび上がる。そして、餌をくれとばかりに口をパクパクとし、しっぽをふる。メダカだって人に愛想を振りまくことが生きる術だと知っているのだ。
 
冬の間は全くと言っていいほど食欲がない。水温が低すぎて仮死状態に近いのか、それとも、じっとしていると腹も減らないのか。僕が金魚鉢を覗き込んでも、水草の奥の方でじっとしたまま顔を出さない。こういうときは餌をやっても食べないのでやらない。食べない餌はやがて水底に沈み水質汚染の原因となる。水が汚れると、掃除をしてやらなくてはいけない。僕の手間が増える。食べられることのない餌は誰もシアワセにしない。
 
僕が水面を覗き込み「食べるか?」と問いかけ、うれしそうにしっぽを振るときは食欲があるとき。知らん顔するときは食欲がないとき。しっぽをふれば餌をやることにしている。えさはテトラキリミンの「メダカのえさ」という商品名のメダカのえさ。それをサッとひとふりすると、パラパラと餌が水面に浮く。それを彼はパクパクと食べる。
 
しかし、うちのメダカは相当なバカで、決まってエサが浮かんでいる方とは逆方向に向かって泳ぎだす。懸命に水面で口をパクパクするのだが、エサは逆方向にあるので、空振りすることになる。「ほんとバカだな、おまえは。」と話しかけてもなお彼は逆方向に泳いでいく。「えさはコッチだ。」と金魚鉢をコンコンと叩くと、ようやく餌がある場所に気づき、彼の朝食の時間となる。
 
メダカといえど、5年もの付き合いともなれば、不思議とコミュニケーションがとれるようになるみたいだ。しかし、それ以上の付き合いになる会社の人間とは、なかなか上手くコミュニケーションがとれないので、困ったものだと思う。