ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

旅猫リポートの感想

旅猫リポート

旅猫リポート 有川浩

 

ぼくはオス猫のナナ。5年前にサトルに拾われ、幸せにくらしてきた。事情があってぼくを手放さなくてはならなくなったというサトルは、引き取り手をさがすため、銀色のワゴンに乗って旅に出る。サトルとぼく、ひとりと一匹が出会う、素敵な風景、なつかしい人々。そしてついにぼくらの最後の旅が始まる――。

 

サトルと猫のナナの物語。主人公のサトルはいいやつだ。僕とは真反対。いいやつになるには理由がある。甘えられない現実がある。子供ながらにそうやって考え、そうやって生きてきた。反抗っていうのは甘えられる環境があるから行えること。サトルにはそれがなかった。その環境があったとしたら、サトルはここまでいいやつにはなれていなかったように思う。ぶつけたい感情もあっただろうが、それをぶつける環境がなかった。

 

サトルはふいなことから飼うことになった猫のナナをある理由から手放さなくてはならなくなった。次の飼い主を求めて日本各地にいる同級生のもとを訪ね歩く。それを理由に同級生に会っておきたかったんだろうなぁ。僕にはそこまでして会いたいと思う同級生は残念ながらいない。日が経てばどうしても疎遠になる。それぞれの生活があり、それぞれの理由で忙しくなる。学生の頃とは違う人間関係ができて、それが楽しかったり、悩ましい関係だったり。

 

子どもの頃の駆け引きのない関係を思い出しては「あの頃はよかったなぁ」なんて思う。喧嘩をしてもなんてことはないキッカケで仲直りできる。大人になるとそう簡単にはいかないね。それは僕が素直じゃないからなのか。ひとりでも生きていける術を身につけたからなのか。ひとりで生きていけない世の中だったら、もう少し人と関わろうと思うし、どうにいかして仲直りするキッカケをつかもうとするのだと思う。縁が切れたらそれまで。簡単に割り切れるようになってしまった。だからサトルがうらやましい。太く短い人生か。長くて細い人生か。

 

サトルとナナの関係もまた羨ましい。相性の合わないペットほどどうしようもないものはない。癒されないのだから。目があうたびに吠えられたり、キバをむき出しにされるなんてたまったもんじゃない。言葉は通じなくても会話ができるのがサトルとナナの関係。その関係に周囲の人間も癒される。人間以外の動物も癒される。

 

ひさしぶりに号泣した一冊です。