ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

早すぎた夏を誘い込むように

セミ

先週末のこと。まだ六月の終わりだというのにセミが鳴いた。ミーンミンミンと鳴いていたからミンミン蝉だと思う。

 

「セミが鳴くにはまだ早いだろ」

 

そう思った途端、そいつは鳴きやんだ。まだ六月の終わりだということに気がついたのかもしれない。暑さに誘われて勢いよく土の中から飛び出してきて鳴いてはみたものの自分以外に鳴いているやつなどいない。あれ?まだ早過ぎたか?「えへへ、間違えちゃった」と顔を赤くしながら、また土の中に戻って行ったのだと思う。蝉の声を聞いたのは、その一瞬だけ。時間にして三十秒も鳴かなかった。夏は一瞬にして引っ込んだ。

 

その代わりといってはなんだが、少しだけ夏に触れてしまった僕はスイカを食べることにした。旬より少し早くても甘くて美味しい。最近のスイカは甘やかされて育てられてるんだな。だからこんな甘ったれになるんだ。いいことだ。ゆとり教育万歳。

 

別の日には桃も食べた。桃の旬はいつだろうと調べてみると、だいたいスイカと同じ頃らしい。出回り始めたばかりの頃の桃は値段が高くて手が出なかった。二個で780円。高けぇよ。桃二個じゃランチの代わりにはならねぇよ。そんな桃も旬を迎えれば値段はぐっと落ち着いてきて一個で210円になっていた。これなら戸惑うことなく買える。ジューシーで甘くて美味しい。あっという間になくる。つかの間のしあわせ。210円のしあわせ。

 

僕はそんなしあわせをカエルの合唱を聞きながら味わった。鳴いているのはどこにでもいるツチガエル。ゲロゲーロ、ゲロゲーロと懸命に鳴いている。夜になると聞こえてくるのはその鳴き声だけになる。ツチガエルの姿はあまり好みではないけれど、鳴き声は季節感があって好きだ。子どもの頃の夏休みを思い出して、気持ちがほっとしてくる。カエルが池に飛び込む様子を見て、一句詠みたくなる人の気持ちがわかるような気がする。