ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

ウミネコたちの計算

防波堤

朝ウォーキング。夏に向けてもう少し回数を増やそうと思っている。夏はちゃんと汗かかないとね。逆に体調悪くなるよね。昼間の炎天下にウォーキングしたら、それはそれで体調悪くなるよね。ぶっ倒れると思う。僕は日の出より少し前に家を出てウォーキング中に朝日が昇るのを見るのが好きだ。でも今日は朝日がのぼってから家を出た。どちらにしても朝日は雲に隠れて見えなかった。

 

僕のウォーキングコースには港が含まれている。その港にある防波堤を往復する。今日は何故だか潮の香りを全く感じることができなかった。潮の香りが消えてしまったはずはなかろう。何度も何度も深呼吸する。深く深く空気を吸い込む。一向に潮の香りを感じない。どうなってしまったのだろう。僕は少しおかしくなっている。そんな僕を笑うかのようにウミネコが鳴く。ミャアミャアと鳴く。不思議な鳴き方をするよね。カラスはカァカァと鳴くし、スズメはちゅんちゅんと鳴く。ウミネコも個性を出すためにその鳴き方を必死に考えたのだろうか。考えた末のミャアミャア。そう鳴けば、単純な人間は我々のことをウミネコと名付けるに違いない。彼らはそこまで計算して鳴いているのだ。そんな彼らは行儀よく防波堤に整列していた。

 

「申し訳ないけど、君たちの横を通らせてもらうよ。なぁに、なにもしやしないさ。だから逃げることはない」

 

僕は信用されていないのだろう。ウミネコは僕の気持ちとは裏腹にさっさと飛び去ってしまう。そして波の上でユラユラと揺れている。自分の意思なんてまるでないかのようにその波に揺られている。あるものは自分の意思で海上を飛んでいる。ミャアミャアと鳴きながら。

 

そんなウミネコの鳴き声を野良犬は不思議そうに聞いている。彼は僕の存在には気がついていない。ウミネコの声に耳を傾けている。チラリと僕の方を見る。「あぁ、人間もいたのか」と。僕が通り過ぎるのを待って彼は鳴き声の方に歩いていく。彼の方を振り返る僕。目が合う。

 

「いやぁ、私は人間なんかに興味はありませんよ。あの不思議な鳴き声の正体を知りたいだけなんです」

 

僕も君にはたいして興味はないからさ。だから僕のうちにも来ないでおくれ。

 

近くには市場がある。市場の朝は当然のように早い。広い駐車場にたくさんの車が我が物顔で待機している。

 

「人間は俺たちなしじゃ移動もできない生き物なのさ。立派な二本の足があるのに自分で歩こうともしない。俺たちは人間のために臭い息を撒き散らしながら懸命に走り続けるのさ」

 

並んでいる車たちがふてぶてしく見える。 生みの親は人間なのに、そのことを忘れてやがる。