ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

黒い家に出向かなければいけない週末

お盆

今年がおばあちゃんの初盆らしい。いつもお世話になっている叔母さんから連絡があった。

 

「今年はおばあちゃんの初盆よ。あなたのところに連絡入ってる?そう、いってないのね。だと思ったわ。あなたにも思いがあるでしょうけど、初盆くらいはね。黙って座ってればいいんだから」

 

初盆というのは亡くなって四十九日を終えたあとに迎えるはじめての盆のことらしい。おばあちゃんが亡くなったのは去年の七月初めのことだから去年の盆はまだ四十九日の喪が明けてなかった。僕は正直、気が進まない。あの黒い家に行きたくない。おばあちゃんを殺したのはあいつらだと思っている。何十年と姿をくらましていたのにノコノコと帰ってきて一緒に暮らし始めた。僕の両親はすでにいない。あいつらの敵はすでにいないのだ。散々親のスネをかじったあげく、そのスネの怪我がようやく治った頃を見計らって、またスネをかじりに帰ってきた。おばあちゃんがコツコツとためてきたものを僕らは守りきれなかった。自分は息子だからその権利があると。お前らが持っているものを全てよこせと。執拗に電話してきた。僕らの顔を見るたびにブツブツと拉致も開かないことを話してきた。僕らと目をあわすことなくうつむき加減のままひたすらと自分の権利を主張する。喧嘩にもならない。単なる戯言。気が滅入った。できれば関わりたくなかったが、そうもいかなかった。叔母さんならそれを守ってくれる。そう判断して守りたかったものを託したのだが無駄だった。

 

「大丈夫だっていうから、つい…」

 

叔母さんはそういった。叔母さんはそんな面倒なことから一刻も早く逃げたかったのかもしれない。僕らがそうだったように。そうしてあいつらはスネをかじり始めた。おばあちゃんと同居してから一年半後、おばあちゃんは亡くなった。実際に手をかけたわけではなかろう。僕の母が数十年もの間ひとりで面倒をみていた。そのあとの数年間は僕ら兄弟がなんとか面倒をみてきた。夜中に電話があれば掛けつけた。デイサービスやサポートセンターとも密に連絡を取り合ってどうにかおばあちゃんを支えていた。それが、あいつらが面倒を見ると言い出して、わずか一年半であの結果だ。納得がいくわけがない。だけども、過去のことを考えても仕方がない。僕らは縁を切ることに決めた。しかし、おばさんからのこの連絡を無視するわけにはいかない。おばさんの顔を潰すわけにいかない。気は重いが週末の法事に出かけなければいけないだろう。その晩、僕は夢をみた。あいつらに執拗に追いかけられる夢。魂がないあいつらからどうしても逃れられない。

 

という夢を見た。