ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

僕の中に流れているそれをやつらは知らない

群

それはもう音を立てて戯れていた。バシャバシャと水面に飛沫をあげながら泳ぐ小魚の群れ。僕が地上から眺めていることなど彼らは気にもしていないのだろう。たくさんの鳥たちも飛び回っているが、その小魚の群れには無関心。

 

「あれを捕まえるのは困難だ」

 

そう考えてはなから諦めているのだろうか。それとも散々試みた上での仕方のない諦めなのだろうか。そんなものに興味を示さなくても彼らは裕福なのか。

 

水面から眺めていると、その群れはキラキラと反射を繰り返しとてもきれい。複数の群れがそこらじゅうを泳ぎ回っている。どういう仲間わけなのだろうか。家族単位か。仲のいい友達同士か。どこにも属さない者もいるのだろうか。属さなければ命の危険がある彼らは仕方がなく群れているだけだろうか。

 

人間の群れはときにそれ自体が危険な存在だ。群れて強がる。群れなければなにもできない。その群れの中心にいるのはひとりの生贄。生贄はひとりでいい。それがくたばれば次の生贄を探せばいいだけだから。その中心にいる者が口から血を吐くまでいたぶり続ける。

 

「もっと苦しめよ。苦しまないと楽しくないじゃないか」

 

どうして選ばれたのだろうと中心にいる者は考える。理由なんてないんだ。僕がそこにいたから。ただそれだけだ。僕に構わないでくれ。僕も君らのことはなんとも思っちゃいない。お互いに知らん顔して暮らそうじゃないか。

 

「それじゃヒマが潰せないじゃないか」

 

単なる暇つぶし。そのために僕は何度も血を流す。もう勘弁してくれ。何度願ってもその願いは叶えられることはない。むしろその願いからは遠ざかる。彼らは血を流したことなどないから、痛みなんて想像できない。温かい血など流れていないのかもしれない。

 

僕は魚になりたい。小魚になってなにも考えずにキラキラと泳ぎまわりたい。大きくなったら網でゴッソリと捕まえられてしまうかもしれないけど、みんな一緒なら諦めもつくじゃないか。血の流れている人間に食べられるなら、僕はこの体にタップリと栄養をため込んでおこう。血の流れていない人間に食べられるのなら、僕はこの体にタップリと水銀をため込んでおこう。キラキラと泳いでいる僕の中になにがあるか、やつらは知らない。