ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

子どもの強み、大人になることの不安

トランクケース

トランクケースに身をのせてスィィーーッッと走っていく子どもがいた。

 

「ほらぁ、やめなさい」

 

きっと子どもは怒られる。そんなことなど考えもせず、今を楽しんでいる。楽しければそれでよい。これは子どもの最大の強みだと思う。実に子どもらしいと思うのだ。後先考えなくてもいいじゃないか。大人になるととかく余計なことを考えてしまう。勝手に不安になって「きっとダメだろう」とあきらめる。トランクケースに乗って走ったら怒られるかどうか。そりゃ、怒られるに決まってるけどね。

 

僕はその様子を少し上から眺めていた。「きっと楽しいんだな」とほほえましく思った。最近、楽しそうな子どもを見かけると、思わず笑顔になってしまう。目が合うと、向こうも笑っている。「そうさ、僕は今、最高に楽しいんだ」と。

 

反面、無表情な子どもを見かけると不安になる。本人も意識したことがない闇をかかえているんじゃないだろうかと。こんなふうに育てられたんだなと。もちろんそれは僕の勝手な想像で、僕が目をそらした瞬間にその子は笑顔になっている可能性だってある。

 

スマホの画面に集中している子を見ても同様に不安になる。それはそんなに楽しいか?楽しいのになぜ無表情になんだ?まあ、そこに集中していれば余計なものを見ずにすむからね。大人が作り上げたいやな世界を見ずにすむからね。でもね、そのスマホのなかも大人が作り上げた世界なのさ。どうやったって大人の世界からは逃れられないのさ。なぜなら君たちはすぐさま大人になってしまうから。

 

大人になることは待ち遠しかった。あの頃の一年はすごく長かったし、僕はいつまで経っても大人になれないんじゃないかと思っていた。働くってどういうことなんだろう。僕にそんな大変なことができるのだろうか。お父さんやお母さんのような大人になれるのだろうか。

 

僕自身の心配をよそに僕は大人になった。だけども、なるようにしかならなかった。就職するときに僕は適当な会社の名前を挙げて、そこに就職した。やりたいことはなかったし、働かなければいけない年齢になったから働きはじめた。ただそれだけのことだったが、両親はとても喜んでくれたので、よかったのだと思う。「毎日つまんねぇな」と会社にいくたびに思っていたのだが、最近ではそんなことすら考えないようになった。なるようになる。なるようにしかならない。まあ、人並みに生活できているのだから、これでいいのだと思う。全て自分で選んだ道だし。

 

子どもの頃に戻りたいななんてことは思ったことがない。子どもの時代からもう一度、人生をやり直すなんて大変なことはもういいや。それは今に不満がない証拠だとも思う。