ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

逃げるに決まってるじゃないか

火事

僕の会社でも防災訓練というのがある。所属する人間にはそれぞれ役割が与えられている。救護班や誘導班、消化班など。しかしこのオフィス内で僕だけ所属する組織が違うものだから、そんな役割は与えられていない。訓練に参加する必要もない。そもそも訓練がいつ実施されるかも知らされない。

 

「訓練です。炊事場から火災発生です。すみやかに避難して下さい」

 

訓練は突然はじまる。なんだなんだ?僕は自体が飲み込めないまま、いつも通りの仕事をする。そして、気がついたらまわりには誰もいない。僕だけがひとりポツンと。僕が叩くキーボードの音が部屋に響き渡る。本当に火事が発生して、身元不明の焼死体が発見されたら、それは僕だと思ってくれていい。

 

いつかの地震発生時のできごと。地震発生直前にはけたたましく警報が鳴り響く。携帯には気象庁から地震発生の緊急メールが届く。

 

ピーッ、ピーッ、ピーッ

 

「まもなく地震が来ます。まもなく地震が来ます」

 

仕事中だろうが容赦なく地震は訪れる。どうせ今回も誤報だろう。そんなに簡単に地震の予測ができるわけないじゃないか。

 

「地震発生20秒前」

 

「地震発生10秒前」

 

これから地震が起こるなんてにわかには信じがたいが、けたたましい警報音に緊張が走る。どうしたらいいんだ?どうするのが正解なんだ?ある人はドアを開け出入り口を確保する。ある人はニヤニヤとする。僕はその場に立ち尽くすのみでなんの役にも立ちはしない。

 

「5、4、3、2...地震発生」

 

グラグラグラッ

 

カウントダウン通りに地震は発生した。地震自体にも驚くが、その正確さにも驚く。こんなにカウントダウン通りに地震が発生するだなんて。誰の陰謀だ?気象庁になまずの知り合いでもいるのか?

 

そののちは防災訓練の経験をいかして、みな避難を始める。

 

「わたしたちは避難しますけど、アズさんどうされます?」

 

逃げるに決まってるじゃないか。組織が違うってだけで、僕の命まで粗末に扱われてたまるか。