ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

人を信じることの危うさ

はしご

ある仕事が舞い込んできた。それは僕の得意分野。その分野の仕事であればだいたいどこの職場の状況も把握している。唯一把握できていないのが、今回依頼があった部署。僕にとってはブラックボックスな部署だった。

 

「仕方がない。Yさんに聞いてみるか」

 

その職場の状況を把握しているのはYさんだ。僕はこの人とは相性が悪く、精神的に追い込まれたこともある。

 

 

人間的に悪い人ではないのだが、悪者ではないがゆえにやっかいなのだ。そうはいっても仕事の現状把握しなければいけない。Yさんとの軋轢は過去の話。過去に固執してもしかたがない。意を決してYさんに相談する。

 

「その件に関してはこうすべきだね」

 

僕は現状把握さえできればそれでよかったのだが、Yさんは「これが答えだ」とばかりにある案を提案してきた。それは僕の考えにも近かったので「まあ、Yさんがそういうなら問題もなかろう」とその話に乗った。それが僕の間違いだった。

 

その案を持って後日、関係者と打ち合わせをした。その場で僕はYさん案を説明した。そしてYさんに裏切られた。

 

「アズ君とは確かにそんな感じの話をしたけどさぁ、それは間違いだよ。正解はコレ」

 

僕はいきなりはしごを外された。このはしごに登れと言われたから信じて登ったのに。下を見下ろしたら、みんなが僕のことをみてニヤニヤしてる。

 

「なに一人でそんなところに登ってるの?」

 

この仕事は本来、依頼先の部署と僕の間で調整すべき案件だ。Yさんには情報収集のためにヒアリングをしたに過ぎない。なのに僕の知らないところでYさんとその部署の間で話し合いは行われていた。知らぬ間に僕は部外者になっていた。部外者はYさんだったはずなのに。

 

「Yさんが問題ないっていうからアズ君はなにもしなくてもいいよ」 

 

依頼元の担当者はそう言った。その部署はYさんのツメの甘さを知らない。表面だけ眺めて問題なしと思いこんで、いざ実食となったときに初めて中身が腐っていることに気づく。Yさんはそんな人なのだ。食べるのがYさん自身ならまだしも他の人がそれを食べてお腹をこわしたらどうするんだろう?苦しむのは自分じゃないから別にいいのだろうか。

 

こういったことをYさんは悪気なく行う。自分は皆のために親切に動いていると思い込んでいる。だからたちが悪い。誰もそんなこと頼んでなんかいないぞ。大きなお世話だ。

 

僕はこの案件自体がどうこうというよりも、この案件を通して、もっとこの部署と関わりを持ちたかった。話し合いをして僕の思いを伝え、その部署の実情をもっと知りたかった。そのきっかけとなるはずだった。ところがYさんは答えを用意しておいて、僕たちに話をさせるスキも与えない。完成したプラモデルを渡されてもなにも楽しくない。

 

「はい、これ、完成品。私が親切に作っておいてあげたらからね」

 

僕がYさんに相談したのがそもそもの間違いだった。僕は時間が経つとつい気を許して関係は改善されたと思ってしまう節がある。そして落胆させられる。人間というのはなかなか変われないものだ。