ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

雫井脩介「望み」を読んでの感想

望み

ある日突然連絡が途絶えてしまった高一の息子・規士。どうやら地元で起きた殺人事件に関係しているという。未成年であるがゆえに事件の詳細な情報は入ってこない。建築デザインを仕事としている父・一登。校正の仕事をしている妻・貴代美。高校受験を控えた妹・雅。家族の思いは交差する。息子は加害者なのか被害者なのか。どちらであっても幸せな結末ではない。無関係であっても巻き込まれてしまった事実に世間の目は冷たい。逃れられない。

 

物語としてのほぼ進展はなく、この家族の心の揺らぎを中心に物語は描かれます。加害者であれば、家族もその罪を背負って一生を送らなければいけない。被害者であれば生きている可能性は少ない。罪を背負い、そういう目で見られながら生きるのことになるのか。被害者であることによって家族は救われるのか。被害者てあれば生きている保証はない。結末を知ることができない家族はあらゆる可能性を考える。しかし、なにもわからない今、それらは全て想像に過ぎない。

 

無関係である世間は好き勝手を想像する。犯罪者として決めつける。ネットに広がる誹謗中傷。匿名であることの無責任さ。執拗に追い掛け回すマスコミ。知る権利などといかにもなことをいい、家族の心をかき乱す。他人の不幸は格好の暇つぶしとなる。他人を悪魔だと罵り、我は神だと勘違いをする。

 

いくら考えても、どうすればよかったかなど、正しい答えは出てこない

 

考えてもしかたがない。だけども考えずにはいられない。不安なことを考え夜も眠れない。食事も喉を通らない。信じてあげることができない。理不尽な誹謗中傷にも耐えるしかない。怒りをあらわにすれば、そこだけが切り取られ、それが世間の印象となる。

 

ラスト1/3はいっきに読みました。どんな結末が迎えているんだろうと気になってしかたがなかった。うん、そういう結末か。