ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

映画「人類遺産」の感想 

人類遺産

彼がこの最新作で切り撮るのは、かつて人間の手によって作られ利用され、やがて人間の都合で放置され、朽ちゆく世界の“廃墟”だ。
これまで通り何の説明もいらない圧倒的な映像美のなか、本作ではついに人物すら登場しない究極の世界観を創り上げている。 

 

僕は廃墟が好きだ。誰もいなくなったその場所に美しさを感じることもあれば、寂しさを感じることもある。華やかでゴージャスであっただろうと想像するほどに空虚感を感じる。なにを間違えてこうなってしまったか。これを作った人はこの結末を予想していただろうか。

 

この映画の冒頭、日本のある街が映し出される。ゴーストタウンと化した街。汚染されて立ち入ることができなくなったあの街だと想像できるが、ナレーションがないためわからない。世界の人々がこの映像をみて、数年前の日本の悲劇だと気づくだろうか。その悲劇は今なお続いていることを改めて思い知らされる。

 

過去の大雨で湖底に水没したアルゼンチンの町並み。海へと崩壊したアメリカ・ニュージャージー州の巨大なローラーコースター。2015年7月に世界文化遺産に登録された長崎県沖の軍艦島。コンクリートの岸壁に打ち付けられる荒波が印象的。5000人以上が生活していた炭鉱の島は美しく朽ち果てていた。

 

これらは過去に人類が作り上げてきたもの。遺産。しかし、SF小説で読んだことのある未来の地球の映像イメージにも重なる。人類が滅んでしまったあとの地球。これ以上は汚染されることもなく、戦争で爆破されることもなく、ただただ長い月日をかけて浄化されるのを待っている風景のようにもみえる。

 

この映画にはホモサピエンスは登場しません。延々と静止画像をスライドショーのように見させられます。ナレーションも一切なし。聞こえてくるのは雨音と風の音。これが90分近く続きます。いくら廃墟好きといえどこれはつらい。これを映画にする必要があるのか。写真集でじゅうぶんじゃないか。僕は途中で寝てしまいました。

 

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