ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

まずいカレーは存在する

カレー

まずいカレーなんてあるわけないじゃん。どう調理したってカレーがまずくなるわけないでしょ。たいていの人はそう思っているはず。だけども、まずいカレーは存在する。それに出会ったのは遥か昔。僕の前世の記憶だ。

 

「アズさんさぁ、明日お弁当買わなくていいわよ。カレー作るからもってきてあげるから」

 

そう言ってくれたのは同じ職場のおばちゃん。いや、おばちゃんというと失礼かもしれない。確か役職もついていたはずだし。カレーを作ってもってきてくれるといってくれるくらいだからそれなりに仲はよかった。なにぶん、前世の記憶だからよく覚えていない。

 

当時僕は地元を離れて寮暮らしをしていた。朝晩は寮のおばちゃんが作ってくれるご飯をしっかりと人並みに食べていた。残すわけにもいかなかったので、無理して食べていたこともある。結果、当時の体重が僕の人生においてマックス値だった。僕は太らない体質だと思っていたが、人並みに食べれば体重は増えるのだと知った。まあ、太ったといっても標準体重を少し超えているくらいだった。久しぶりに出会ったたいして仲も良くなかった同僚に「顔が丸くなった」といわれて太ったことを自覚した。

 

さすがに寮のおばちゃんは昼ごはんの世話までしてはくれない。僕の先輩が寮のおばちゃんに弁当を作ってもらったことがあるらしい。だけども、先輩はそれを食べずに寮のゴミ箱に捨てたらしい。当然、おばちゃんがゴミの回収もするので気づく。おばちゃんは激怒したらしい。当たり前だ。先輩が常識がなさすぎなのだ。

 

僕は昼ごはんをどうしていたかというと会社の近くの弁当屋で弁当を買ったり、スーパーでパンを買ったりしていた。当時は食に関するこだわりなど皆無で空腹が満たされればいいという感じだった。

 

そして、カレーをいただくことになった当日の昼。わざわざ僕のために家からカレーを持ってきてもらえるだなんてありがたい。「いただきます」と一口。...ん...んん。まずい。なんの味もしない。確かにカレーの色をしているし、ジャガイモも人参も肉も入っているのだが味が全くしないのだ。泥水を食っているようだった。どうすればこんな仕上がりになるのだろうか。市販のルーではないのだろうか。ハウスバーモンドカレーなどであれば、いくら料理が下手でもそれなりの仕上がりになるはず。拷問と化した昼食となった。

 

僕はこの日、この世の中にまずいカレーが存在していることをはじめて知った。だけども、それをおばちゃんに悟られるわけにはいかない。「大変結構なお味でございました」人付き合いというのは大切だ。ついてもいい嘘はあるのだ。