ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

不審物と心遣い

不審物

「なんだ、これは」

 

郵便受けの中になにかが入っていた。ビニル袋に包まれたなにか。ちょっとやめてよ、なにこの嫌がらせ。手を触れるのも躊躇われる。大量の虫とかが入っていたらどうしよう。やだ、触りたくない。かといって放置するわけにもいかない。なにかが動いている様子はない。おそるおそる袋に手をかける僕。

 

煮物

 

「!???煮物?」

 

はて、どういうことだろうか。ひょっとして下向かいのおばちゃんが持ってきてくれたのだろうか。そのおばちゃんからは以前に巻き寿司をもらったことがある。なにかのお礼にいただいたのだと思う。そのときも今回同様、ポストに入っていた。手紙も一緒に入っていたので下向かいのおばちゃんだとわかったのだ。だけども、そのおばちゃんとは親しくはなかった。そのとき、数年ぶりに顔を見て「まだ生きていたんだ」と驚いたほどである。僕が小学生のころもおばちゃんだったから、今では相当なおばちゃんなのだと思う。親しくもないおばちゃんからもらった手作りの巻き寿司。もうしわけないけど食べられなかった。

 

今回もそのあばちゃんからの贈り物だろうか。いや、最近の接点はなにもない。元気かどうかさえもしらない。と考えているときにあるものに目がいった。

 

「フキ入っている」

 

そうか、あのおばちゃんか。先日、数年ぶりに僕のうちを訪れた少し先に住んでいるおばちゃん。そのおばちゃんが持ってきてくれたに違いない。玄関を開け、僕の顔を見るなり「ん?合ってる?」と言ったおばちゃん。なにが合ってるのか間違えているのかはよくわからなかったが、とりあえず「合ってるよ」と答えた。

 

「若返ったねぇ、お兄ちゃん」

 

以前の僕よりも若く見えて「弟かと思った」というのだ。僕もいちおう人間だから人並みに年をとりますよ。

 

そんなおばちゃんが僕のうちになにをしにきたかというとフキが食べたくて、僕のうちにきたというのだ。僕のうちの庭にはフキが生えているが、僕自身はそれを食べない。一度も手を出したことのない食材だから、そこに生えていても食べないのだ。

 

このおばちゃんに会うのも数年ぶり。乳がんを患って手術をしたらしい。また近々手術をするというのだ。「いつ死んでもいいんだけどねぇ」というおばちゃん。大丈夫ですよ、そういう人に限って長生きをするんだから。

 

でも、このフキの煮物も僕は食べなかった。陽のあたる郵便受けにいつから入っていたかわからない煮物。食べたい気持ちはあったけど、それでお腹をこわしたくない。ふたをあけて匂いを嗅ぐととても美味しそう。でも、ゴメン。食べれないや。ありがたいお心遣いは写真におさめておきます。

 

煮物

 

ごちそうさまでした。