ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

悪臭男と不正女

新幹線

新幹線の座席の予約をするときに僕は大抵、車両の一番前の窓側を予約する。目の前が壁だから人の目が気にならないし、リクライニングを倒されて不快な思いをすることもない。僕は今日もその座席を予約した。途中までは僕の横の席は空席。途中から人が座った。

 

「うわっ」

 

異様なニオイがするのだ。すぐさま僕は手ぬぐいで口元を抑えたのだが、それでも悪臭がする。男の片手には酎ハイの缶。一本を飲み終わると、タイミングを見計らったように後ろの席の男が新たな酎ハイを手渡してくる。時間はまだ朝の九時前。悪臭の原因はアルコールのそれだけではない。

 

僕はしばらく口元を抑えて我慢していた。しかし気分が悪くなってきた。吐きそうだ。たまらず荷物を抱えてデッキに逃げる。開放感。あのニオイから逃れることができた。目的地まではまだまだある。あれを我慢できるわけはない。

 

僕はどうしようかと考えた。車掌に相談してあの男がどこの駅で降りるのか教えてもらおうか。そう簡単に教えてくれるだだろう。個人情報だから教えられないと言われるのではないだろうか。僕の座席を変えてもらうようにお願いしようか。そういうことができるのか。ネットで調べると座席の変更は可能らしい。

 

なんて考えているとある駅についた。僕は押し出されるようにホームへ。外から車内の様子を伺ってみる。その男はまだ降りる様子はないらしい。ん?その横の僕の席に女が座っている。そこは僕の席だぞ。なんて図々しい。というかよくもそんな環境の悪い席に座れるものだな。

 

仕方がない、車掌に相談しよう。ずっと立っているわけにもいかない。車内に戻り僕の堰に座っている女をチラリと見る。女性もオドオドとした目でこちらをみる。そりゃオドオドするだろうな。不正に席に座っているのだから。

 

僕は車掌を探す。デッキには人が座り込んでいる。夏休みだから込んでいるのだな。なんて思いながら車内をウロウロしていると、ふと気がついた。

 

「ここって自由席じゃね?それなのに結構、席空いてね?」

 

自由席は八割くらいしか埋まっていないのだ。車内の様子からどうせ自由席は満席だろうと思い込んでいた。なんだ余裕で座れるじゃん。しかも窓側。しかもその横には人はいない。自由席のほうが快適だった。

 

そこで不思議に思うのが不正をしてまで僕の席に座っていた女。あんなにオドオドしながら人の席に座るくらいなら、堂々と自由席に座ればいいのに。しかも自由席のほうがよっぽど快適なのに。不思議な人もいるものだ。