ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

パパと呼ぶか、ママと呼ぶか

赤ん坊

赤ん坊というのは実は生まれた瞬間からしゃべることができるらしい。だが、あえてしゃべらない。赤ん坊なりに計算しているのだ。言葉を発さずとも泣けば大人はやさしくしてくれる。腹が減れば泣き、満腹になれば寝る。こんな生活が許させるのは生まれたばかりの今、この瞬間だけだ。だから、余計な言葉は発しない。大人の勘にさわらないように。

 

生まれてから一年が経過しようとしている。さて、そろそろしゃべらなければマズイだろう。第一声をどうするか?ママと発すべきか、パパと発すべきか。そればかりをこの一年考えてきた。選択ミスはこれから先の人生にも影響しかねない。

 

僕にとってはどうでもいいことなのだが、ふたりの親にとっては重要なことらしい。僕のこれからの生活を金銭面で支えてくれるのはこの男だ。生きていくためにはお金は必要らしい。そんな会話を腹の中にいるときにさんざんきかされた。お産の費用、マイホーム、学習保険。色々と金がかかるらしい。だとすれば、やはりパパと呼ぶべきか。

 

その隣にいる女がママだ。この女のことはよく知っている。なんといっても十月十日をともにした人間だからな。そこはあたたかくて、まるで宇宙空間を漂っているようでなんともいえない気持ちだった。できれば出てきたくなかったが、まあ、仕方がない。

 

直接、僕の面倒を見てくれるのはこの女だ。食事を作ってくれる。一緒に昼寝をしてくれる。体調が悪ければ病院に連れていってくれる。そして、なによりのストレスのはけ口。うるせぇ、このクソババア。一緒にいる時間が長いのはこの女だ。だとすれば、やはりママと呼ぶべきか。

 

悩んだあげく、僕は天井を指差しこう叫んだ。

 

「ゴッド」

 

僕は神の子と呼ばれるようになった。