ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

這い上がってくるもの

穴

そこに穴が開いているとついついみてしまう。

 

排水溝の穴。そこからなにかが這い上がってくるのではないだろうかと不安になる。大きなものは這い上がってこないように半分ほど蓋をしてみたりもする。

 

大きなものであれば、きちんと閉じていない蓋などその力で押し上げてしまうだろう。無意味な半分の蓋だが、僕はそれで安心できる。その穴をチラリとみやり、僕は思う。「なにもいないな」

 

湧き上がってくるのは僕の不安だ。ぽっかりと空いている穴が大きければ大きいほど僕は不安になる。深ければ深いほど不安になる。その暗闇の先にいったいなにがいるのだろうと。

 

その正体を突き止めれば安心できるのかもしれなけど、突き止める勇気なんてない。それが僕の想像をはるかに超える薄気味の悪いものだとしたら。

 

暗闇の先に幸福などありはしない。そんな奥底にそんなものが眠っているはずがない。いくら掘ったって埋蔵金など出てきやしないのだ。

 

空を見上げれば僕が求めているものは降ってくるのだろうか。ビルの屋上。人の影。舞う紙切れ。それは一万円札。群がる人々。僕が求めていた幸福ってこれ?

 

目の前に舞い降りてきたそれに手を伸ばす僕。すかさず隣の男が手を伸ばす。僕はそれを手に入れることができず。ニヤリとする男。他人の幸福を手に入れようとする。

 

ドサッッ!!

 

不安な音とともに広がる赤。倒れる男と男。下にいるのは僕に不穏な笑みを向けた男。手には一万円札を握り締めたまま。その一万円札をばらまいた男は最後に身を投げた。この紙切れは幸福などではなかった。一瞬にして訪れた不幸。

 

空を見上げても僕が求めているものは降ってこないようだ。