ミニマム コラム

執着せず。最低限のモノで。日常の共感。

この世とは思えない地に足を踏み入れた

海

その景色はこの世のものとは思えなかった。

 

数日前からストレスを抱え込んでいる(と思われる)僕は朝早くに車を飛ばした。いつもなら家から歩いて散歩に出かけるのだが、家の周りを散歩するのも飽きたし、まだ見ぬ風景に出会いたくて、車で少し遠くまで行ってから散歩をすることにした。

 

「そうだ、海に行こう」

 

なんとなく思いついて海がある方向へ車を飛ばした。だんだんと霧が濃くなる。数メートル先がみえないくらいの濃い霧。

 

「この先は波が荒くて危険です。海での遊泳を禁止します」

 

そんな看板の向こうには獣道が続いていた。この先に海がある。別にそこで泳ぐわけでもなし、遠くから海を見るだけならかまうまい。

 

僕は少しのスペースに車を止め、海を目指して歩いた。次第に海の音が大きくなる。それは波の音というよりも、うねりのような音。恐怖さえ感じるような地球の音だ。

 

「ちょっとこわいかも」なんて思いながらもこわいもの見たさから前に出す足はとまらない。次第に霧は濃くなってゆく。うねりも大きくなり恐怖も増す。

 

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海が目の前に広がった瞬間、ものすごいうねりに包まれた。一歩足を前に出すごとにうねりは大きくなる。こわい、ものすごくこわい。これ以上、前に進めない。

 

しかも、霧はその濃さを増し、視界のほとんどは真っ白。そこには海が広がっているはずだけど、その存在は確認できない。かろうじて「あれが波だろうか」と思える程度のうっすらとした線が確認できるだけ。

 

海も空もない。真っ白な空間に全身を包むようなうねりだけが響く。

 

「ここはどこなんだろうか?」

 

まるで別の惑星にでも来てしまったかのよう。この世とは思えない空間。人間が立ち入ってはいけないのではないかと思わせるような景色だ。

 

「なんだ、あれは?」

 

砂浜の向こうには建物らしきものが見える。砂浜に建物?そんなバカな。まわりには沢山の突起物。まるで卒塔婆。切れ切れの旗が無数にはためく。まるで映画のセットのよう。

 

こわいもの見たさでそれに近づく。砂浜は凹凸になっており、凹部分に足を踏み入れるとアリジゴクのように中央に吸い込まれていく。注意しながらその建物に近づく。

 

全てが漂流物で作られている建物だった。二棟のうちの一棟は二階建て、もちろん簡易的な建物なので、窓などはない。流木で作られた机と椅子も設置されている。だれが何の目的で作ったのだろうか。

 

「これ以上、ここにいてはいけない」

 

そう感じた僕は逃げるように車に戻った。

 

なんだったのだろう、あの空間は。夢だったのだろうかと思うほどの不思議な空間。うちに帰って脱いだスニーカーは砂まみれだったので、僕は確かにそこにいたのだ。